くまさんとうさぎさんの秘密

大和撫子の育て方

by 宇佐美 優那

くまさんを見送ってしばらくしてから、
「優ちゃん、軽音大変だったって聞いたよ。ここのところお疲れだったけど、大丈夫??」と、ひとみさんは私に尋ねた。
「いろんな事があったの。。周りに流されてばかりになっちゃって、立て直さなきゃって思ってた。バカなことしちゃったから、くまさんがひとみさんに何言ったのか心配。」
「大丈夫よ。私の方こそ、優ちゃんには想像もできないくらいバカなこといっぱいしてるわけだし。義明だって、適当なもんよ。義明は義明で、確かに頼りになるところと、何かしでかしそうで不安なところがあるのよね。。息子は、良いところも悪いところも見えすぎちゃう。」

「くまさんには、いろいろ助けてもらってるよ。でもさ、くまさんに言われて、迷ってることがあるの。」
私は、軽音のことも、ひとみさんにそのまま話してしまうことにした。

ひとみさんの意見はこうだ。
「あのさ、何があったのか、そのまま松野さんに話したらいいんじゃないかな。カレともめたお友達の話も、酔っぱらいに絡まれたことも。学祭は参加せず、他のイベントには参加することにしたら良いんじゃないの?」

「普段は抜けてる人たちも、学祭は集まるんだよね。あと、抜けてる人たちが「やる気ない人」に見られてるのも分かってるし、誰に相談するのかも難しくて。」

「二人って、抜けるには、程よい人数じゃないかな。。みんなの前で、学祭否定したりしたらまずいけど、来年は抜けるのは、事情を話せばOKじゃないかな。。」

ひとみさんは、あっさりと私の話をまとめてくれた。シンプルで、相手にも伝わると思う。でも、ひとみさんが言ってることも、ちょっと違った。

きよしさんと、衣装準備して、楽しかった。平林さんと、やりたい曲にチャレンジできて、嬉しかった。あの歌に関しても、自分は抜けときたかっただけだ。嫌いじゃない。何でって、浮気でも不倫でもない、純愛ソングな訳で、やっぱり、松野さんときよしさんなら、それなりに似合ってるから。
酔っぱらいとか彼との関係とか、あの歌がなければ変わっただろうか??あの歌自体大した問題でもない気がしてくる。何が良くなかったんだろう。ひとみさんの言ってることが正しいのかな?

私には、もう1つ決断を鈍らせている物がある。
くまさんに、はっきりと、軽音の活動自体反対されてること。。

その話をしたら、ひとみさんは、笑った。
「義明、相当慌てたみたいだけど、そんなの義明の事情だから、無視して良いわよ。それに、優ちゃんがやりたいようにやらないと、あの子もやりづらいんじゃないかな。。」

「やりたいようにって言ったって、何がやりたい事なのか、頭の中まとまるのに時間がかかっちゃって。その間に、周りの人がどんどんいろんな事決めちゃうの。気がついたら、自分でも思いもしなかった方向向いてもがいてたりして。」

「くまさんには、どうしても助けてもらうことが多いから、一方的に迷惑かける人にはなりたくないです。。」
私は、また、暗い気持ちになった。

「あらら、本当に義明の顔色なんかうかがわなくていいわよ。あの子ね。。自分がおせっかい焼いた人が、成功したり、出世したり、そういうのが楽しいのね。「あの人が無名の頃から知り合い」っていうのが彼の人脈で、財産でもあるしね。だから、優ちゃんがふらふらしてたら、あの子はどんどん空回りするよ。」
「何か、責任感じさせられちゃう。。成功とか、出世とか、私には縁がないものだよ。」
「本当に、気にしないでやって。とっさにうかつな判断しないのも、正しい判断だよ。ちゃんと、優ちゃんの気持ちが固まってから渡り合わないとね。」
「分かりました。」
「それとさ、義明は、1つの意見を言ったまでで、それが義明の意見の全てでもないよ。。多分。。」

「反対だからってはっきり言われちゃったんです。ふざけて、車で迎えに来てほしいって言ったから。」

ひとみさんは、複雑な顔をした。

「義明、車買うって言ってたよ。義明は、優ちゃんがいじけてやめちゃうなんてことは想定してないよ。」

「えーっ、。。止めた方が良いでしょうか??」

ひとみさんは、苦笑いした。
「義明は、自分がやりたいことしかならない子だから、ほっといて大丈夫よ。免許取るのは良いことだし。」

「ホント大丈夫でしょうか。。」
「免許取ったら、誉めてやって。私も運転できなくなるし、早くとらせたいくらいよ。優ちゃんに喜んでもらえたら、励みになるわ。」
「そっか、ひとみさんも、そろそろ無理できない感じだものね。。」

私は、聞かなかったことにすることにした。
ごめん。くまさん。思いっきり女の打算だわ。ひとみさんとは、共犯関係だ。

「優ちゃんは、義明の周りにはいないタイプかもね。突然他人の懐に飛び込んでくるかと思えば、急に逃げ腰になって。でも、こっちも一緒に焦っちゃったり、頑張らされちゃったり、気がついたら可愛くて離せない感じね。」ひとみさんは、にやにやしながら、私をハグした。

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