くまさんとうさぎさんの秘密

恋は盲目

by 中野 馨

昨夜のことだ。

「しなくていいって言ったよ。私、本気だから。」と、私は言った。その、たった1つの事が気になって、頭が冴えちゃって、行為に集中できなくなってしまった。。
「大事にしたいんだ。俺だって、馨さんのことは、本気で考えてる。。」
時田さんは、熱い息を吐いて抱きしめてくれた。。でも、、やっぱりちゃんと避妊していた。何か、避妊する時の、男のその一瞬が間抜けに思えて、意地悪な気持ちがむくむくわいた。

何でこう、思っていることが伝わらないんだろう。。
体が昂っている事もあって、涙が出てきた。

「私、気持ちは崖っぷちなわけ。だから、、遊んでんなら、よそでやって!!」
私は、時田さんに、イライラと突っかかった。時田さんは、頭をかかえる。それから、煙草に手を伸ばした。

最悪だ。

時田さんが後ろを向いて煙草に火をつける。
彼が何も言わないのを見て、数分、どこからか、チチチという時計が時間を刻むような電子音が聞こえることが気になった。
私は、静かに、ベッドを抜けて、服を着た。そして、そのまま部屋を出た。

こないだから、自分がどんどんおかしくなってるのは分かってる。そもそも、元々が、自分がちょっと変かもしれないということにコンプレックスを持っている。
時田さんは、終始腫れ物でも触るように大切にしてくれた。私にも、ちゃんと優しくしてくれた。だから、思いきって、ちゃんと将来を考えたいって伝えたつもり。
「時田さんの赤ちゃんなら産んでもいい。」って、めちゃめちゃダイレクトに言ったと思う。

ところがだ。。
その後、時田さんは、何も答えてくれなかった。
ただ、もう一回、すごく丁寧に抱かれて、何か、大切にされてるのは分かったけど、、ごまかされてるような気もした。

私にとって、昔から、自分が感じたことは、絶対だ。ごまかされてる。。
時田さんの、その時の気だるげな表情のあちら側に何が隠れているのか、考えると混乱して、訳が分からなくなった。

< 81 / 138 >

この作品をシェア

pagetop