君がいて、僕がいる。
第5章

先輩の異変




「もう、帰る?」


改札を出てすぐ、圭介が寂しそうな細い声でそんなことを聞いてきた。
今はまだ14時40分。時間的にはまだ早いし、いつもなら確実に一緒にいる時間。

だから私は当然

「…圭介んちに行くかと思ってたんだけど…」

自宅に帰るつもりなんかなかった。


「あ…なんだ、よかった。
このまま帰ってほしくなかったから」


そういって、私の手を握る。
優しい顔で私に笑いかけ、暖かい手で私の手を握る。

……なんでかわからないけど、ちょっと圭介が不安そうに見えた。
なにが不安なのかはさっぱりわからない。だってさっきまで普通に話してたから。

…でも今は、なんか私がどこかに行ってしまいそうなのを圭介が引き留めてるような、そんな感覚…
よくわかんないんだけど…なんかいつもの圭介とは違った。


「……圭介、なんかあった?」

「え?なんもないけど…なんで?」

「いやなんか…いつもと違って寂しそうだから」


私がそういうと、圭介は私のとなりから前に来た。


「真希は寂しくないわけ!?」

「・・・はい?」

「昨日からずっと一緒だったから、バイバイするの寂しくない!?」

「あー、そういうこと…
でもまた明日も会えるじゃん?だから別に…」


どうせ、明日も屋上行くでしょう?家まで迎えに来るんでしょう?
…なら、別にそこまで…それこそ、永遠の別れじゃないんだから……

それならおばあちゃんたちをもっと寂しく思った方がいいんじゃ…


「……こんな気持ちも俺だけか…」

「どんだけ落ち込んでんの」

「真希はどんだけ元気なの」


といわれましても。
普通に元気だけど。それに、今日はまだ一緒にいるんだし。
普通に暗くなるまで一緒にいる予定ですけど。


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