羊と虎

何時も早めに来るので、杏奈も待ち合わせ20分前に駅に着いていた。

『流石にちょっと早かったかな』

電車の乗り継ぎが良かったので、自分の予想していた時間より早く着いてしまう。

当然凱はまだ来ておらず、駅を出た辺りで凱が来るのを待つ事にした。

その間に、何人かに声を掛けられてしまい、その都度断りを入れていたが、最後の二人組みがしつこかった。

『しつこいなぁ。このままでは手を上げそうでヤバイ。』

何度断っても相手が来ないから待ち合わせは嘘だという。

体の後ろで握りこぶしを作って何とか怒りを抑えていたら、凱がやってきた。

「俺の連れに何か用か?」

ワザと何時もより低めの声で男たちに声を掛けると、振り向いた男たちの顔色が変わった。

「え、いや、何でも無いデス!じゃぁ」

慌ててその場を立ち去った二人をホッとした表情で見送った。
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