羊と虎

「あれ?覚えてないの!?」

さっきまでの意地の悪い顔から一変、驚きに見開かれた目で逆に叫んでいる。

「は・・い。私酔うと記憶が無くなるようでして・・・」

神妙な面持ちで返答する杏奈を、珍獣でも見るかのようにシゲシゲと眺める。

「うっわー。取締役、可哀想・・・」

哀れむような顔で杏奈を見る鈴木に、不安が募る。

「え?私、凱に酷い事しました?!」

「おはよう。何だ朝から騒々しいな」

杏奈の叫びを煩そうに目を細めて山葉が近づいて来た。

「小鳥遊、金曜の夜の事覚えてないんだって・・・」

「え?嘘だろ?」

山葉も驚きで動きが止まり、マジマジと杏奈を見る。
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