羊と虎

「で、どうだった?」

その場に居なかった慧は事の経緯が気になるらしく、先を促す。

「そうね。彼女、羊ちゃんかウサギちゃんかと思ってたんだけど、虎だったわ」

「虎?」

羽奈の言葉に少し考えこむ。

「えぇ、私達の所にに乗り込んできて、お見合いをぶち壊しに来ましたって、真っ直ぐ目をみて言うの」

「それは・・」

くくっと電話の向こうで慧が笑うのが聞こえた。

「まるで王子様のように颯爽と現れて、凱君を掻っ攫って行ったわ」

「ほう」

「気になったから、後を追ったら、ホテル前で彼女から告白して、更にキスまでしてたわよ」

「それは本当か?」
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