羊と虎

凱の手は、そのままにしていると寝入ってしまいそうな位心地よかった。

だが、車はもう目的地に着いていて、このままずっと乗り続ける事は出来ない。

何とか、気合を総動員して態勢を立て直して車を降りる。

「ありがとう・・ございました」

その一言が出た頃やっと、状況がわかってきた。

何時も飲みすぎると眠ってしまい、何をされても起きないので、酒の量は控えているのに、疲れた体にはジョッキ一杯のビールですら結構な酔いになったようだ。

車内での愚痴は凱が受け止めてくれたお陰でスッキリしたが、恥ずかしい事この上ない。



何時もなら目が覚めないのに、我ながら良く目が覚めたものだと、走り去る凱の車を見送りながら思った。

『憂鬱なのに、楽しみでも有るなんて・・・』

醜態をさらしてしまい恥ずかしのに、明日また顔を合わせるのかと思うと、憂鬱でもあるのに、同時に楽しみだと思う自分の心を持て余していた。
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