君が好きと言ってくれるなら、なんだっていい
「うわ、まじかよ。俺あいつに言われて教室行ったんだよ。全部あいつの差し金かよ。そろそろ話したいってなったときに、あいつが仲良さげに帰ってる写真見せつけてくるしよ。全部あいつのせいだろー」


はぁーっとその場に座り込む。



「忘れられない人ってのは……?」


「たしかに忘れられないほど、大事な人はいるよ。でも、そーいうじゃねぇから」


「……そっか」



その人の存在が気にならないなんてことはない。
でも、あたしだと言ってくれる彼を信じたいと思った。



「もう、その人はこの世にいねーんだ」


「……え?」


「だから、俺は卒業したらその人の夢だった俳優になるために東京にいく。そのためにこっちでレッスンだってしてる」


「……すごい」



夢を語る浩ちゃんは、とても輝いてて。
いつもよりもさらにかっこよくみえた。



「みんなにはまだ内緒だぞ。愛莉だから言うんだから」



あたしの唇に人差し指をつける。



「……うん」



そのまめ、どちらからともなく唇がふれた。
あの日出来なかった、キス。

遠回りしたけど、ここから始まったあたしたち。

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