君が好きと言ってくれるなら、なんだっていい
「じゃあ、また来るね……」



寝室のドアは開けずに、そっと呟く。



「落ちついたら連絡するよ」



中から聞こえたそんな静かな言葉を合図に、あたしはソファーに乗せたバッグを手に取って大ちゃんの家をあとにした。



「どうすればよかったんだろう……」



共演の話を聞いたあの時に言うべきだったのだろうか。
でも、その時点も大ちゃんは気にしていたいだろう。
この半年一緒にいて、大ちゃんのことはよくわかっているつもり。
だから、言えなかった。

別に、傷つけたかったわけじゃないんだ。



〝大輔と大丈夫か?〟



ブルブルッと震えたスマホのディスプレイに表示されていたのは、浩ちゃんからのLINE。



〝大丈夫だよ。心配ありがとう〟



相談なんてしない。
これは、あたしと大ちゃんの問題だから。

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