恋が枯れるまえに、約束を

○先輩




「雨寺〜、ちょっといいか?」


「はい?」


次の日のお昼休み、私はいつものように裏庭へ向かおうと席を立てば、担任の佐々木(ささき)先生に呼び止められた。


「このプリントをだな、5階の資料室に適当に
置いといてくれないか?」


「別にいいですけど…5階って確か
立ち入り禁止なんじゃあ…」


「まぁ本来教師以外は立ち入り禁止だけど」


「いいんですか?」


問いかける私に、先生はひーふーみーと、プリントを数えると、次は腕時計を見て「あと10分か」と呟く。


「俺ぁタバコ吸いてんだよ、一服したい訳、
分かる?」


うわぁ…身も蓋も無い。


「…」


「頼むって伊織チャン、な?
中学からの付き合いじゃないの」


「その呼び方やめて下さい、
佐々木〝さん〟」


私は1つため息を吐くと、
プリントを受け取った。



「相変わらず私をパシリにするの、
教師になっても変わらないですね」


「そう言って悪態ついても、結局パシられてくれちゃう伊織ちゃんも変わらないねえ。…まぁ真尋の奴がいたら怒られてるけど。」


「…もう、本当たい」


佐々木先生こと、佐々木 智也(ともや)はお兄の昔の馴染みで、小学生から高2の付き合いである。

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