社内恋愛狂想曲
「お互いのことを何も知らないのも不自然だから、好きな食べ物とか趣味なんかも聞いておこうか」

確かに私は職場とか仕事のあとに飲みに行ったりしたときの三島課長しか知らない。

それ以外で知っていることといえば、料理ができることくらいだ。

「じゃあ、お互いに自分のことを話しましょう」

それから私たちは、ガーデンエリアを歩いたり、ときどきベンチで休んだりしながら、お互いのことを話した。

子供の頃に犬を飼っていたとか、バレーのポジションはアタッカーでレフトオープンが得意だとか、満員電車の中の香水や体臭が入り雑じった臭いが苦手だとか、ちょっとした共通点がいくつもあった。

「ちなみに潤さんは、レバニラ炒めとピーマンの肉詰めは好きですか?」

「ああ、両方好きだよ。なんで?」

「いえ、私も好きなので。今度作りますから一緒に食べましょう」

「じゃあ、そのときは手伝うよ」

奥田さんに意地悪して教えた“彼の好きな食べ物”は嘘ではなくなった。

いつかそのうち奥田さんにも、護には他にも付き合っている女性がいることを、さりげなく教えてあげようと思う。




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