社内恋愛狂想曲
「ってことは……瀧内も見たことあるんか?」

葉月にそう尋ねられると、瀧内くんはコクリとうなずいた。

「給湯室とか会議室とか、会社でイチャついてたのは何度か目撃してます。僕が第三倉庫専用のエレベーターを待ってたときに、地下から上がってきたエレベーターに二人一緒に乗っていたことも一度ありました」

「えぇっ……」

第三倉庫は地下の狭い通路を通った一番奥にあるので、その場所の不便さから、過去のあまり売れなかった商品の過剰な在庫や、発売に至らなかった企画のサンプル品、取っておいて意味があるのかよくわからないような資料の墓場みたいになっている。

商品管理部で働く私たちは古い商品のサンプルや、データ化されていないアナログな資料がどうしても必要な時にはそれを探すため、第三倉庫の目の前にある専用のエレベーターを使って足を運ぶことがある。

けれどそんなことも年に数回で、せいぜい片手で数えられる程度の頻度の低さだ。

地下には第三倉庫と、ボイラー室などの一般社員が行く用事のない部屋しかないので、営業部の護が地下に行く必要などあるはずもない。

ましてや業務上なんの接点もない商品管理部の奥田さんと一緒に第三倉庫に行くなんて、どう考えてもおかしい。

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