社内恋愛狂想曲
「葉月、こんなところまで来てどうしたの?」

私が尋ねると、葉月は耳を貸せと促す。

「志織、有田課長と付き合ってるん?」

「えっ、なんで?!」

「なんか若い女の子の間で噂になってるみたいやけど……ホンマに?」

「ないない、ありえないから!」

もしかして朝のヒソヒソ話はこれだったのか!

そういえば昨日、奥田さんにも同じことを聞かれたけれど、噂の出所はどこなんだろう?

「それからな……志織が三島課長をフッたって噂もあるんやけど……」

「えぇっ?!何それ!そんなことあるわけないよ!」

三島課長をふるどころか、直接的ではないにしても、むしろフラれたというか失恋したのは私の方だ。

火のないところに煙は立たないはずなのに、私の知らないところでありもしないことを噂されているというのは腑に落ちない。

「なんでそんな噂が立ってるんだろう?」

「さぁ……。私もあの子らが話してんのがチラッと聞こえただけやから、詳しいことはわからんけど……。なんとかうまいこと言うて聞き出してみるわ」

「うん、何かわかったら教えて」

それから葉月は腕時計を見て、急いで営業部に戻った。

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