社内恋愛狂想曲
「うん、かわいいから絶対に似合うと俺も思うよ」

本当に似合うんだろうか。

たとえ似合わなくても、潤さんなら喜んでくれそうな気がしなくもない。

「それからこれは伊藤くんから。私と潤さん、おそろいのマフラー」

色違いのチェック柄のマフラーをふたつ手に取って見せると、潤さんは赤いマフラーを私の首に巻き、紺色のマフラーを自分の首に巻き付けて、私の手を握る。

「マフラーしてる志織もかわいいな。寒くなったらこうして一緒に通勤しよ」

「おそろいのマフラーはともかく……手を繋いで会社に行くの……?」

私がおそるおそる尋ねると、潤さんは少し首をかしげて考えるそぶりを見せた。

「そっか……そうしたいのはやまやまだけど、会社の人間に見られると恥ずかしいか……。じゃあ手を繋ぐのは家を出るまでにしておこう」

家を出るまでって……潤さんはどんだけ私と手を繋ぎたいんだ。

「さすがに会社に行くときには無理だけど、それ以外のときはこうして歩こうな」

そう言って潤さんはまた私の手を握る。

どうやら潤さんは、どうしても私と手を繋いで歩きたいらしい。

そんな甘えたなところもかわいい。

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