社内恋愛狂想曲
8時前には準備を終え、一緒にコーヒーを飲みながら迎えを待っていると、潤さんはソワソワしながら何度も時計を見た。

「落ち着かないなぁ……」

「うん、緊張しちゃうね」

「入籍したら志織も“三島”になるんだもんな。ずっと“佐野”って呼んでたから、なんかちょっと変というか、不思議な感じがする」

「私も同じこと考えてた」

私たちはやっぱり考えることがよく似ているようだ。

「そういえば……有田課長に連絡した?」

「うん、今日と明日の2日間、有給にしてもらった」

火事があって近々引っ越すことは金曜日に話していたけど、急遽今日に決まったので有給を取らせて欲しいと私が言うと、有田課長は「明日は通院日なんだろ?ついでに明日も有給取ったらどうだ?」と言って2日間有給が取れるようにしてくれた。

「志岐たちにも連絡しといたよ。今日は出かけるから帰りが志岐たちが来るより遅くなるかもって言っておいた」

伊藤くんたちには今日入籍することをまだ話していない。

夕方に会って「今日入籍したよ」と突然言ったら、みんなビックリすることだろう。

コーヒーを飲み終えてカップを片付け終わるのと同時にチャイムが鳴り、二人とも思わず背筋が伸びる。

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