正しい『玉の輿』の乗り方

「分かったよ。じゃあ、少しだけお邪魔させてもらおうかな。君のお父様には内緒だけどね」

私は彼の言葉にようやく胸を撫で下ろした。

こうして、彼をアパートに連れ込むことには成功したのだけど…。


「樹さん。どうかされましたか?」

キッチンでお茶を用意していると、樹さんがこたつの中を覗き込んでいた。

「いや……こたつのコードが見つからなくてさ」

樹さんの言葉にハッとする。

「あ~すみません。そのこたつは壊れているので、コードを外してあるんです。でも、大丈夫ですよ。こたつの中にこのペットボトルの湯たんぽを入れますから」

「え……」

私が“綾野家直伝の湯たんぽ”を見せると、樹さんは驚いた顔で固まってしまった。

しまった!
ついつい貧乏じみた発言を。
何とか挽回しなければ。

「と、とりあえず温かいお茶でもどうぞ」

私は急いでお茶を運ぶ。

「ありがとう」

けれど、樹さんは一口飲んだ後、すぐに口から吹き出した。

「なにこれ」

樹さんは、にがぶしを潰したような顔で私を見る。

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