正しい『玉の輿』の乗り方
11 黒幕との対決~樹side~

全て仕組まれていたことなんじゃないか?
そんな疑惑を抱いたきっかけは、早乙女彩乃が発した何気ないひと言だった。

『オーダーしていたウエディングドレスがようやく完成したんです。デザイナーに何度も手直しさせていたら、一年もかかってしまって』

そう、
彼女が会話の中で口にした“一年も”という言葉だった。

縁談の話が出たのはつい数ヶ月前のこと。
一年前と言ったら、まだ『ハピネス社』の買収さえもしていない時期だ。

不思議に思い、ホテルに確認すると、式場の方も一年前から押さえられていた。

これはいったいどういうことか?

翌朝、俺は社長室に向かい、東吾にこの件を打ち明けた。

『確かに樹の言うとおり、俺達は嵌められたのかもしれないな。既に一年前には『ピネス』から発がん成分が検出されていたのかもしれない。財前副頭取は『ハピネス社』が重大な問題を抱えているのを知りながら、うちに買収話を持ちかけたんだ。「サクラール」が欲しくて堪らない早乙女社長の為に。なんて卑怯な奴らなんだ!』

東吾は悔しそうに拳を握った。
そして、俺を見つめながらこう言ったのだ。

『なあ、樹。おまえが全部ぶっ壊すっていうなら、俺は黙って従うよ。おまえも、好きな女と一緒になりたいだろ? もうおまえの好きにしたらいい』

一瞬、頭の中に菜子の顔が浮かんだ。
でも……。

『そんなこと、できるならとっくにそうしてる』

俺は重いため息をつきながら、社長室を後にしたのだった。


< 76 / 95 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop