クールな次期社長と愛されオフィス
「湊、お待たせ。今日はもう帰っていいって」

湊は顔を上げると嬉しそうに微笑み席から立ち上がった。

「マスター、ミズキちゃん、いつもごちそうさま」

そう言うと、私の手をとりそのまま店の扉へと向かった。

マスターが後ろから「妬けるねぇ」とちゃかしているのが聞こえる。

私は湊と顔を見合わせて笑うと、振り返ってわざとらしく深々ともう一度頭を下げた。

「おつかれさん」

マスターの声を聞きながら扉をゆっくりと閉める。

湊は平気だった。

誰が見ていようと手を繋いだり肩を抱いたり。

海外生活が長かったからかもしれないけれど、私はまだ慣れなくていつもむずがゆいような恥ずかしくてどうしていいかわからない気持ちになった。

時々、社内の誰かに見られてやないかしらと心配して言うけれど、湊は笑って「ノーブロブレム」と言うだけだった。

手を繋いだまま駐車場に向かい、湊の車に乗り込む。

あれ？

今日はお客は湊が最後だと思っていたけれど、もう一台駐車場の一番端に車が停まっている。

私が気がつかなかっただけかな。

その車はどこかで見たことのあるような車だったけど、はっきり思い出せないまま駐車場を後にした。

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