秘める二人の、叶わぬ恋の進め方。
我が儘な自覚 今宵side


「黒川、こっちの服とこっちの服、どっちが気合い入りすぎてない感じがする?」

「どちらがお似合いか、ではなく、気合いが入っていないように見えるか‥ですか?」

「そうよ。」

複雑そうな表情で黙り込む黒川に、そう言ってハンガーに掛かった服を見せる。

天気はあいにくの雨だが、
今日は最上さんと出かける日だ。

待ち合わせの時間まではまだ余裕がある。

自分のセンスだけでは頼りないから、
結局昨日の夜に絞った二着から黒川に選んでもらう事にしたのだ。

「私は、こちらの服の方が今宵様に似合うと思いますよ」

そう言って黒川がタートルネックの白いニットを指差した。

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