雨上がりに。
(引越しの準備とかあるけど大丈夫かなぁ)



「まや!この問題教えて!数学!!」




でもわたしはクラスの友達に呼ばれて、他のことをしているうちにバイトのことを忘れてしまっていた。






結局周りにつられて1日勉強して過ごしていた。




授業が終わり、教室内はまた静かな自習室へと変わっていた。




(いても迷惑やし、帰ろかな)




そう思ってカバンを持って立ち上がった。




「あれ?帰るん?」




声をかけてきたのは中学からずっと同じ部活で中3から同じクラスの和哉だった。




そして、わたしの初恋の相手。




好きだったのは中学の間だけだったはずなのに、今でも話したりすると少し緊張する。





「うん、寒いし」




「俺も帰ろかな」




そう言って和哉も立ち上がった。




方向が一緒だからという理由で高校に入ってからはたまに一緒に帰るようになった。





冬の間はバス通だからバス停までだけど。





「えっ、和哉、医学部受けるん!?」




帰り道初めて和哉の進路を聞いた。




こんな話をしてしまうのも受験期だからだろうか。




「俺のことバカやと思ってた?」




そう言ってわたしの頭を軽く叩いた。





それでわたしも笑う。





「そうや、もし第1志望受かったら話あるんやけど」





「え、なに?気になるやん」




突然和哉が言い出した。




6年間一緒にいて和哉から話があるなんて言われたことは一度しかなかった。




ーわたしが失恋した時。




好きな人に告白したいから協力してくれ、って。





(またそんな感じの話なんかな)





「しゃーなしな!受験がんばって!」





そんな話をしているとバス停に着いてしまった。






するとちょうど和哉の乗るバスが来たところだった。





「じゃ、また」




「うん」





バスの窓から手を振ってくる和哉に手を振り返してわたしたちは別れた。





(話ってほんとになんなんやろ)





そんなことを考えているうちにバスが来た。





でも、





でもわたしが和哉の話を聞くことはなかった。





ねぇ、和哉。





キミの話はなんだったんですか。





これを知るのはもう少し先のことになる。
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