雪のなかに猫
俺はシャッターを蹴飛ばし中に入る。
中には不用心な程に遥をさらった二人しかいなかった。念の為に警戒は解かない。
「そろそろ返してもらおうか。どうやら俺が言う前にバラされたみたいだしね。」
「誠さん……」
「遥……ちょっと待ってね。直ぐに助けに行くから。」
そう言って不安そうにする遥に微笑みかける。遥は少し微笑んでいた。
「お前らの要求はどれも飲めない。」
「なに!?こ、この女がどうなってもいいのかっ!?」
「どうなるって言うんだ……そのまえに、この女って誰のことだ?」
そう言って鼻で笑うと。あいつらはさっきまで捕えられていた遥の居た場所を見て驚いていた。だって、知らぬ間に奏に救出されてるもんな……
「で?どうなるんだ?」
「っ……」
「うるさいうるさい!!動くな!!お前ら全員打ってやる!!」
「俺は早く帰りたい。だから選べ。ここで死ぬか。それとも、何事も無かったかのように帰るか。」
と、今までにないくらいの(冷たい)笑顔を見せた。そしたら相手が腰を抜かし……去っていった。俺は取引に使おうと思ったスーツケースを達也に投げ渡して奏に支えられてる遥に歩み寄る。
「ごめん、遥を危険な目に遭わせて……」
そう言って遥を見ると遥は少し目を伏せていた。奏は俺に気を使ってスーツケースを上手く取れず中身が散乱して焦っている達也の所に行った。それを見て遥は
「聞きたいことはたくさんある……でも、一つだけしか聞かない。私を好きなのは……嘘じゃない?」
そう言って泣きそうな顔をして聞いてくる。そんな遥に微笑みながらほほに手を添え
「あぁ、嘘じゃない。」
そう言ったら……彼女は……花のようにふわりと笑った。そんな彼女に俺は……二度と離さないように抱きしめた。