雪のなかに猫




あれから少しして注文してきたものが運ばれてきた。食べ終わってから少しして、花火会場近くの駐車場に止めて、少し歩けば屋台が並んでいるのが見える。




「遥ちゃん!遥ちゃん!綿菓子だよ!!射的もあるし、輪投げもある!!なにする!?」



「……うん。そうだね。」




テンションが高い綾ちゃんに、私のテンションが付いていかず。戸惑いながら返事する。そんな私に綾ちゃんは気がつくことなくキャピキャピとはしゃいでいた。





「ん、じゃあ。花火が始まる少し前にあの場所で待ち合わせな。」



「あぁ、わかった。綾華……迷子になんなよ?」



「分かってるって!お兄ちゃんじゃ無いんだし!」




奏さんはスーッとどこかに消えていき、達也さんと綾ちゃんはお互い兄弟の会話をしていた。



「遥どこか回りたいところは?」



「ん?綾ちゃん達と回らないの?」



「俺と二人は嫌?」



なんて首を傾げる誠さん。なんというか……捨てられた子犬みたいに見てくるから、断れない。今だなお、迷子になるなよ。と言い合ってる兄妹組を残して誠さんに連れられその場から離れる。





「なんか食べたいものは?」



「んー。」



色んな屋台がありすぎて悩んでしまう。ここは定番的に言って唐揚げかな?ってか、唐揚げが定番なの?って聞かれてもわからないけど。




なんて思っていたらどこからか、醤油のこうばしい匂いがしてきて、辺りを見渡したら‘イカ焼き’とのれん?が見えて、それを察した誠さんは私の手を引いて買いに行く。




「おじさん!二つください」



「らっしゃい!二つで400円ね!」




イカ焼きを受け取りハム。とかじる。
イカのコリコリ感と醤油の味がたまらなく美味しい。これすきかも。





「美味しい?」




そう聞かれて頷くと誠さんは満足げに私の手を引き次を見て回る。その後は、金魚すくいに的当て、射的にりんご飴、綿菓子に……と色々食べて、見て回った。



「そろそろだね。暫く花火見てるから何か買っていく?」



「え、んー。唐揚げ?」





そういった私に少し待ってろ。と言って買いに行った誠さんの背を見ていたら私が立っていた木の反対側から声がした。




「こんばんは。いい天気ですね。花火大会日和だ。」




聞いたことのある声で私は振り返らずため息をつく。



「約束の時間は明日ですよね。」



「えぇ、そうてすよ。」



「まさか、この三日間見張っていたんですか?」




そう聞くと、声は少し笑った。




「まさか、三日間、張り込みなんて死んでも嫌ですよ。あの人になんと言われるか。たまたまですよ。たまたま。」




そう言ってため息をつく声に不思議に思った。お父さんなら張り込みしてても、何も言わないだろうに……この人が言うあの人とは、お父さんじゃないの?そんなことを考えていたら誠さんの姿が見えた。




声の人は少し間を置いてそれでは。と言ってどこかに行ったのかそれから声はしなくなったのだった。




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