35階から落ちてきた恋 after story ~you are mine~
「スタイリストの林さん。一昨日現場で出会った時に聞いたのよ」

ああ、あのスパルタスタイリストさん。
「その方、撮影の時にかなりお世話になりました。真紀さんがまた林さんとお会いすることがあれば、私がお礼を言っていたと伝えていただけませんか?」

「え?お礼?林さんに?」
真紀さんは目を真ん丸にして驚いた顔をした。

「お礼?ねぇ、果菜ちゃん。あなたお礼を言うようなことを林さんにしてもらったの?」
「え?ハイ。衣装を着て立つ時の姿勢とか歩き方とかごくごく基本的なことでしたけど。撮影前に教えていただいて助かりました」

「へぇー」真紀さんは心底驚いたって表情をした。


「ねぇ、それって林さんにかなりしごかれたんじゃないの?」
「んー、まあそうともいうような。でも、基礎も何もない私がカメラの前に立つためには必要な知識でしたよね。だから林さんには本当に感謝していますよ」
あの時の情け容赦のない厳しい言葉と態度を思い出すとゾッとしないでもない。
思い出して頬がぴくぴくとした。

「・・・果菜ちゃん、私が思うに林さんのしごきは嫌がらせだったと思うわよ。間違いなく」

ええ?!
驚いて口に入れようとしたナスがポロリとお皿に落ちた。

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