35階から落ちてきた恋 after story ~you are mine~
「でも、仕事をしてなかったらもう少し会える」

「そうかもしれないけど。それはもう少し考えてから決めたほうがいい。果菜にとっても仕事は大事だろ」

「うん。そうなんだけどねー。でもね」
私は貴くんの背中に回した腕に力を込めて胸に頬をすり寄せた。
「貴くんが足りない」

はっと息を飲むような気配と同時に私の腰を抱き寄せていた貴くんの腕に力が入り、くるんっと天井が回って私はソファーに押し倒されていた。

「足りないというなら与えてやるよ」

そういう意味じゃないと言おうとした口は柔らかい彼の唇で塞がれた。
いつもより荒々しさを感じるほど深いキス。
息をするのも忘れて彼についていこうとすると段々息苦しくなってくるのに私も止められない。

はぁ…と息継ぎをすると、彼の唇が離れていった。
温かい唇が離れた寂しさに閉じていた目をうっすらと開けると、私をじっと見下ろしている貴くんの顔がすぐそこにあった。

「果菜、俺にも果菜が足りない。」

貴くんのその顔と声は反則だ。
私をじっと見つめる切れ長の目にはダークブラウンの瞳、その目の下のほくろ。
低く色気のあるテノールの声。
お腹の奥がきゅんっとしはじめる。

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