35階から落ちてきた恋 after story ~you are mine~
翌日彼女と一緒に現れたタカトの様子を見て、8か月前に結局忙しくて世話になったクリニックに自分で健康保険証を持って行くことができず、事務所のスタッフに頼む事になってしまったことが今更ながら深く悔やまれる。

タカトは水沢さんの事が気に入ってたまらないという様子だったから。

「あのナース、もしかしてタカトの知り合いだったとか?」
二人のあまりにも親しげな様子にタカトに声をかけた。

「ああ、ちょっと前からな。何だよ、お前も気になるのか?ダメだ、果菜はやらねぇぞ。俺のだからな」

何だ、その言いぐさは。
しかも、昨日の今日で呼び捨てしてるし。
そのうえ、客席でリハーサルを見守っている彼女の所にサッと行ってしまった。
恐らく彼女を自分の控え室にでも隠すつもりだろう。
タカトのガキみたいなやり方に苦笑する。

出会っていたのは恐らく俺の方が先。
好意を持ったのも俺の方が先だろう。

でも、俺は何も行動を起こさなかった。
タカトに文句を言う資格はない。
タカトは俺の気持ちを敏感に感じ取ったのだ。

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