35階から落ちてきた恋 after story ~you are mine~
「お前は俺に言いたいこと言わないくせに、こうやって別のとこで本音吐いてたのか」
パチンとデコピンが飛んできた。

痛っ!

「痛い、ひどっ。乙女の顔になんてことを」

「痛いのは俺の心だ。誰が乙女だ、笑わせるな。ひどい女だな、お前は」

「貴の方がひどいじゃない。これ何度目のデコピン?赤く腫れたら人前に顔出せないじゃん」

「出さなくていい。お前は俺のもんだ。俺の前以外はどこにも行くなっ。俺にだけ怒って俺にだけ拗ねて俺にだけ甘えてろ!」

え?
今、何と。
余りに横暴で余りにも子どもっぽいその言い草におでこの痛みも一瞬忘れてしまう。

反論をやめてじっと彼の顔を見つめると、貴くんはフイっとバツが悪そうに窓の方を向いてしまった。
まだ、眉間の皺は深い。

車内に突然訪れた静寂を破ったのは清美さんの笑い声だった。

「もうっ。あんまり笑わせないでよ。ここまでしっかり他人の痴話げんか見たのなんて初めてだわ」
運転に集中させてと言いながらヒイヒイ笑っている。

「・・・すみません」
私も俯いて謝ってみたけど、これ私が謝ることなのか?
貴くん、隠れてたんだよね?
清美さん、わざと私が本音を言うように話を振ったんだよね?
はめられたとしか思えないんですが。
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