35階から落ちてきた恋 after story ~you are mine~
いつまでたってもスタジオに戻らない私を心配した広告代理店のパンツスーツの女性が控室にのぞきに来てくれてようやく私は林さんから解放された。

「私の選んだドレスを綺麗に着こなしてもらわないといけないのでちょっと姿勢のとり方をお教えしてました」なんて林さんはおっしゃってましたけど。
はい、そのお気持ちわかります。ごもっとも。

スタジオに戻ると、ユウキさんもスタジオに戻ってきていてテーブルの上にカメラを広げてスタッフと打ち合わせをしている。

私が入るとユウキさんが走ってきた。
「果菜ちゃん、いい、いい。可愛いっていうか美しいよ。さすがだ」
もうべたべたに褒めてくるから「ユウキさんちょっと嘘くさいですよ」苦笑した。
いくらなんでも美しいは言いすぎ。

「あれ?たかく・・進藤さんと清美さんはどちらに?」

「ああ、貴斗はさっきちょっと電話が入って席外してたな。でももう戻ってくると思うけど。社長は電話の後用事が出来て慌てて出て行ったよ。あ、果菜ちゃん、貴斗がいなくて悪いけど、ちょっとそこに立ってみて」

「はい」と返事をして指示された位置に移動しようと歩き出した。

私がスタジオに入ってきたときから気が付いていたけれど、スタジオの中にいる人たちの不躾な視線とヒソヒソとした話し声が耳に入ってしまう。清美社長が連れてきた女に興味津々という事なのだろう。

「誰?」「スタイルいまいちじゃない」「どこから連れてきたのかしら」「タカトと身長のバランスが取れない」

場違いな場所に来てしまったことに一層の不安が増す。おまけに貴くんも清美さんもいないなんて。
ため息をつかないように気を付けるけど、みんなに注目されるライトの下に一人で行くなんて足が震えてしまいそうだ。

「無駄口叩く暇があるような人は今すぐ出てって。仕事をする人だけ残ればいいから」
ユウキさんがピシャリと言い放った。

スタジオ内の空気が変わる。
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