愛してるのに愛せない。
多勢に無勢のその状況は、正に卑怯・・・。

殴られ蹴られしているその人はもう息も絶え絶え・・・・。

「・・・なんて卑怯なの・・・。」

そう呟いた声は、意外にも響いた。

「誰だ!」

そう言って振り返った蛇。
思いっきり目が合ってしまった。

「あーあ・・・・。見つかった・・・。」

なんて暢気に言いながら、仕方なく、蛇の前へと出る。

「女・・・?」

私が女だと分かると、気持ち悪いくらいの笑みを浮かべる。

「・・・・お・・まえ・・・。」

竜鬼の人は、私のことを見ると、驚いた顔をする。
良かった・・・。
まだ、大丈夫そうだ・・・。

「お姉ちゃん、俺らとあっちで遊ぼうか。」

なんて、ニタニタと笑いながら、私の腕を掴む。
咲や、海斗さんたちに触られたときとは違い、虫唾が走る。

「怖くないからね!」

まったく動かない私を見てそう言う。

「に・・・げろ。」

苦しそうにそう言う竜鬼の人。
私が出てから、すでに20分は経っている。
それでも助けに来ない竜鬼。

「どうなってんだか・・・。」

「ん?」

未だに私の腕を掴む蛇。

「いつまで掴んでんだよ・・・。気持ち悪い。」

「・・・あ??」

反抗的な私の言葉に、イラつく蛇。

「触るな。」

そう言うと、腕を捻る。

「動くなよ、そのまま動けば、肩が外れる。」

冷静にそう話す私を見て、その場にいた全員の動きが止まる。
何が起こっているのか、理解ができないいのだろう。

「お前・・・調子にのんなよ!?」

若干、私にビビりながらも、拳を振り上げる。

「そんなんじゃ、当たらない。」

ひらっと避けながら、鳩尾に蹴りを入れる。
軽々と飛ぶ蛇。

「あー!お前、そんなことしていいのかよ!」

どこからともなく聞こえてくる声。
姿を見せないのが。あいつらしい。

「あんたが遅いからよ、黒。」

そう言うと、私の目の前に現れる、猫のお面を付け、黒い服を着た男が現れる。

「白が早いだけだろ。」

ケラケラと笑うこいつは、私の相棒。
笑うたびに、左耳でゆれる、トンボ玉のピアスがきらきらと輝く。

「お・・・お前・・・。」

黒に驚いた蛇は、後ずさっていく。
ゆっくり振り返る黒。

「あー・・まだいたの?帰りなよ。目障り。」

そう言うと、蛇たちは悲鳴をあげながら去っていく。

「・・・・。」

「気絶してるな。」

「そうね。」

竜鬼の人は、いつの間にか気絶していた。
私のことをみていないならそれでいい。

「でも、まさか、お前が都市伝説の白黒猫の一人だとは思わないよな。」

なんて、また笑う。

「・・・分かるわけないでしょ。
分からないようにしてるんだから。」

溜息を吐いたのと同時に、バイクの音が聞こえてきた。

「ま、ここは俺に任せろ。
お前は、普通の女の子として生きたんだもんな。
せっかく・・・姉ちゃんが危険な世界から抜けられたんだしさ・・・・。」

そう言う黒に、ごめん。とだけ言う。

バタバタと走る音が近づいてきた。

「くー!!」

そう私を呼ぶ声がする。

「良助・・・・。」

そう呼ぶと、何人かの足音がこっちに近づく。

「くー・・・・・。お前。」

私を見つけると、良助は、目の前に立つ黒に目線をやる。

「初めまして。」

黒は、お辞儀をする。

「よかったね。君らの姫が無事で。」

ケラケラと笑う黒と私は、初めて会ったような顔をする。

「・・・お前がやったのか!?」

そう敵意むき出しで言う良助。

「違う!この人は助けてくれたの!」

慌てた様子で話す私。
そうこっちは偽りの私。
普通の女の子になるためだけに用意された私。

「・・・・そうなのか?」

良助は、真実なのかを黒に尋ねる。

「あぁ、この子の悲鳴が聞こえてね。ただ助けただけだ。
じゃあ、またね、子猫ちゃん。」

そう言って黒は、私の頬にキスをすると、そこかへ消え去った。
・・・・気色悪いことを・・・。

「大丈夫か!!」

駆け寄ってきた良助に頷く。

「この人、私が来たときには、息絶え絶えで・・・・。
私が助けられたときにはもう気絶してたみたい・・・。」

そう言うと、良助は、そうか。といい、私の頭を叩いた。

「馬鹿が!!女一人で出て行くな!!危険すぎる!
今回は、たまたま運が良かっただけだ。
・・・まさか、こんな所で黒猫に会えるとは・・・。」

そう言う良助の目は、キラキラしていた。

「憧れてるの?」

そう聞けば、もちろんだろ!!そう言って、倉庫に帰るまで永遠と黒の話を聞かされた。
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