九月一日〜朝から晩まで~
第1章 逃避行-危うい朝



水不足とまとめられた八月の、
月の名が変わっただけの今日。

通勤時間帯を過ぎた下り列車から、
徐々に人の気配が薄くなって行った。



赤い電車の車窓には、海。
青を背景に、未だ入道雲が立ち上る。

過ぎた夏を惜しむ気持ちに到底なれなくなったのは、
いつの頃からだっただろう。



四人がけのボックス席で、
前に座るブレザー制服姿の少女を、
横目で確認した。

目が合うと、
立花紗良は嬉しそうに笑う。

笑い返してはやらない。

窓枠につく頬杖のまま、
また外の景色に目を逸らす。

すると、トンネルだったりする。

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