きみとなら、雨に濡れたい
1 ・ まだ青紫色だった頃
彼女は嘘をつかない人だった。
だけど彼女は人を疑うことを知らない人でもあった。
だから迷信やまことしやかに囁かれている噂をあっさりと信じては俺に本当のことのように話す。
そんなバカがつくほど正直は彼女は俺にとって太陽みたいな存在だった。
そんな太陽が空の彼方へと消えて、もうすぐ一年。
俺は今日もさ迷うようにきみを探している。
この降りやむことを忘れた――雨の町で。
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