きみとなら、雨に濡れたい
6 ・ 雨上がりの時まで
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強いと思っていた柴田は、そのあとも泣き続けた。
周りの雨音よりも激しく、すがるように。
どうしてだろう。ひとりにさせたくないって思った。
足元がおぼつかないほどの不安定さが俺とそっくりで。
俺もひとりじゃダメだけど、ふたりでなら、なにか見つけられるんじゃないかって。弱さをむき出しにした柴田を抱きしめながら、俺のほうが支えられている気分だった。
柴田と別れたあと、俺は家に帰った。
ベッドに横になりながら頭の中で交差する柴田と美憂の顔。
――『千紘くん。紫陽花の花言葉って知ってる?』
そう聞かれたのは、美憂が大きな発作で病院に運ばれてから、二週間が過ぎていた頃だった。
「え、花言葉?」
俺はすぐに聞き返す。この町で一番大きな病院の306号室が今の美憂の部屋。
西側だから日当たりはいいらしいけど、梅雨の影響で連日雨なので日が当たっているところは見たことがない。
病室の窓からは患者たちが散歩できる庭が見渡せた。そこに咲いている紫陽花はここからでもはっきりと青紫色が分かる。
「当ててみて」と、美憂が言うので俺は「愛情?」と、あてずっぽうで答えた。
花言葉なんて調べたことはないし、なんとなく愛情って意味がある花は多いイメージだったから。