妖狐に染めし者
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あれから隠り世では数日が経った。だけど、現世で

は、9年もの月日が経っていた。私は、履き慣れな

い制服というものを着て、時雨さんのいる学校とい

うところへ通い始めた。伊波先生という方に連れら

れ、教室というところに来た。

「ここで待ってろ。合図したら入ってくれ」

「は、はい」

そう返事すると、伊波先生は教室の中へと入ってい

った。

そうして1分ぐらい経つと、指で、「入ってこい」

という合図があった。

私はその合図の後、戸を開け、中に入る。

その瞬間、懐かしさを感じるほどの面影に目がとま

った。

「時雨さん…」

心の中でそう思った。本当に成長してる。だけど、

私のことは覚えていない。それでも、それでも、会

えてよかった。

私は自己紹介を済まし、席に向かった。時雨さんの

近い席だけど、隣ではなかった。でも、時雨さんの

姿が見られてすごく嬉しい。

そのあと、他の方達の自己紹介を聞き、もうすぐで

時雨さんの声が聞けると思い、横を見ると、時雨さ

んは私のことを見つめていた。

私は少し胸のあたりに違和感を覚えた。だけど、時

雨さんは自分の番がもうすぐだと気付いていないよ

うだった。私は、机の上に顔をつけ、微笑んだ。

「も…う…す…ぐ…で…す…よ…」

そう口を動かした。すると時雨さんは、少し照れて

前を向いた。私はその反応に顔を赤らめた。

そして、顔を下に伏せ顔を隠す。

落ち着くと私はまた彼に顔を向ける。すると、時雨

さんは、

「あ…り…が…と…う…」

と口を動かし、つい嬉しくなって、笑みを隠せなか

った。

時雨さんはまた顔を前に向かせた。だけど、照れて

いる表情に、また胸に違和感を感じる。

私は、笑みを浮かばせながら、姿勢を正した。

時雨さんのことを思い出すと、私はただただ嬉しか

った。
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