憧れの舞台俳優は✗✗でした
(よし、これでよしっと…)

参考書を買い終え、書店を出ると五月とは思えない外のもわんとした

熱気があかりを包んだ。

「あっつ……」

ずっとクーラーの効いた書店にいたせいか、外の暑さにくらっとした。

(カフェにでも行ってもっと余韻に浸るか…)

あかりは、書店の裏の路地にあるふわふわのシフォンケーキが

評判のカフェがあることを思いだし、歩き出した。

裏の路地は陽の光があたっておらず、ひんやりしていた。


すると、あかりが今いる位置より少し先の書店の裏口から

人が出てきた。

あかりは少しびっくりして立ち止まった。

(おっきい人だな……明石さんくらいかな…)

その人は黒のカーディガンに白のロングTシャツにジーパンという

シンプルな服装をしていた。

(マスクと帽子で顔は見えないけど、え、あの格好って…もしかして…)

すると、その人物はあかりの方に歩いて来た。

手にはスマホらしき物を持っていて、

それを食い入るように見ている。

あかりとすれ違った瞬間、

「りんたそカワユス………世界一カワユス、嫁にしたい、

むしろ嫁にきて」

と小さい声で呟いた。

「!?その声、もしかして明石さん??」

思わず声に出てしまっていた。

その人物は驚き、素早くあかりを見た。

その瞬間、路地裏に風が吹き抜け、その人物の帽子が落ちた。


そこには、あかりの憧れの2.5次元俳優、明石昴の青ざめた顔があった。

そして、持っていたスマホから

『ご主人様、今日もお疲れ様です!なでなでしてあげますね』

というショタの声が聞こえた。

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