暴走族の姫 Ⅱ
珠兎side




俺は、月冴が寝たのを確認して寝室にはいった。















そこには、やたら顔色の悪い女が寝ていてその隣に座って此方を睨む少年の姿があった。

















蘭「お前。誰。」
















あぁ。これは警戒されているな。
















珠兎「お前の大事なものの治療をしに来た月冴の友人だ。」
















少し、表情が和らいだがまだまだ警戒されていることは変わらなかった。
















蘭「なら、月冴、は?」
















警戒されていた理由はこれだったのかとすぐさま合点がいった。
















珠兎「あぁ。あいつは今、寝てる。いや、寝かしてきた。」
















すると、少年は安心したようにこう呟いた。
















蘭「そっか。寝れたんだ。よかったね。」
















それは、顔色の悪い女に言っているようで、少し切ないように思えた。
















珠兎「二人の名前は何て言うんだ。教えてくれ。」
















俺は少年のとなりに座り、カルテに記入をしてもらった。
















カルテが書き終わり、手元に戻ったカルテには綺麗な字で、記入者 正貴院 蘭と書かれていて驚いた。
















大手銀行の責任者が子供を虐待して警察に捕まったとかで有名な正貴院家だ。
















ニュースにでていた事案だったのでよく知っていた。
















珠兎「お前、傷はもう大丈夫なのか?」
















患者は女だけじゃなく、お前もじゃないかと目で訴える。
















蘭「俺は、もう大丈夫。だから、悠を助けて。」
















切実に蘭は願っていた。
















珠兎「分かった。そこにある点滴台近くに持ってきてくれるか?」
















蘭は頷くと部屋の隅においてある点滴台をこちらに持ってきてくれた。
















俺は、然るべき処置を始めた。
















それから、二時間程経って悠が目を覚ました。















悠「ん…」














目を覚ましたことにすぐ気づいたのはやはり蘭だった。
















蘭「悠?聞こえる?大丈夫?」
















心底、心配している顔をして、悠の状態を確認している。















悠「だいじょうぶだよ…。ありがとう。ごめんね。」
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