冷酷な王さまは愛し方を知らない


ちゃんとした治療が受けれさえすれば解決する。
でも、その治療を受けるには膨大なお金が必要。

まだ、そのお金は貯まりきっていない。
貯まるまでお母さんには、頑張ってもらわないと…。



コートを羽織り、寒さに耐えながら家路を急ぐ。
積もり始めた雪をザクザクと踏みしめて。



吐く息が白い。
世界がモノクロになったみたい。



「ただいま、お母さん」



玄関から中に入って、眠っているはずのお母さんに声をかける。
コートを脱いでハンガーにかけると、手洗いを済ませお母さんの眠る寝室に向かった。



「おかえり、リズ」

「あ、お父さん。帰ってたの」

「ああ。今日は雪だからな。店じまいさ」

「私も」



お母さんの部屋にはお父さんが帰ってきていた。
お父さんは、城下で大工の仕事をしている。
この雪では作業ができず取りやめたのだろう。



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