冷酷な王さまは愛し方を知らない


私は、凛としてアルさまを送り出さなければならない。


「アルさま、どうかお気をつけて…」

「ああ」

「ご無事に戻られるのを、待っています」



なんと言葉を紡げば伝わるだろう。
想いは届くのだろう。

言葉にはなんの力もないけれど。
それでも、どうかと願う。

どうか無事に。
この温もりをここに戻して。




「そんな顔をするな」



優しい手が私の頬に触れる。
慈しむように撫でる手がとても暖かくて。



「俺は強い。俺の軍はとても強いのだ。信じて待っていろ」

「……はい」



それでも、貴方は誰よりも最先端で戦おうとするのでしょう。
先陣を切って剣を振るい傷つくのも厭わず戦うのでしょう。


泣いてはだめだと思うのに。
送り出す時には笑顔がいいとわかっているのに。
こみ上げるものは止まってくれない。




「お前は涙も、綺麗だな」



チュ、と音を立て瞼に落ちてきたキス。
零れ落ちた涙をアルさまの指が掬う。



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