冷酷な王さまは愛し方を知らない


「ええ、花屋で働いていたのを、一目ぼれしたのです」

「そうか。アルヴィン殿が一目ぼれとは、相当ではないか」

「ええ。煌びやかに着飾ることばかりで、価値が地位や名誉だけだと思っているような者とは違い、謙虚でささやかな幸せも見つけられるような、とてもできた嫁です」

「それはそれは、こうして惚気られるとは」



初老のその方は声を高々に楽しそうに笑う。
アルさまのその声が聞こえたのか、先ほどの御令嬢の方々は散るようにはけて行った。
少しだけスッキリした気持ち。

アルさまにとても感謝だ。
でも、少しだけ悔しい。
自分でちゃんと示したかった。



「リズ、平気か?疲れたら言うように」

「はい…。ありがとうございます。アルさま」

「なにがだ?」



嬉しくてお礼を告げるけど、アルさまはなんの事だかわからないというように首をかしげる。
先ほどのあれは、意図したものではなかったんだと知り、余計に嬉しくなった。

アルさまの本心のようだから。




< 295 / 413 >

この作品をシェア

pagetop