冷酷な王さまは愛し方を知らない

「行ってくる」

「お気をつけて…」


それ以上、言えなかった。
アルさまの重荷になってはいけないと。
口を開いてしまえば、きっと必要のないことを言ってしまう。願ってしまう。

行かないで、とそんな願いが漏れてしまいそうだ。


「そんな顔をするな」

「んっ」


触れるだけのキス。
とても切なく思えるほど。

泣きはしない。
笑顔で送り出すと決めているから。
きっと、帰ってきてくださる。
そう信じて、送り出す。


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