想うだけの…
「ポーチあったんだ。どこにあったの?」

恭平は手についたワックスを洗い流しながら聞いた。

「さっきね、パパが最後にいつ使った?って言ったでしょ。それでね、思い出したの。
1月に実家に帰ったときメグの結婚式に出たでしょ。そのとき旅行バッグに入れたままだったんだよね」

「じゃあ、あの時から3ヶ月も化粧してないってこと?」

「そんなの、1才と3才の子がいたら自分になんて構ってる時間ないよ。2人産んで体型が戻ってるんだよ?頑張ってるほうだよ」

「そうだねごめん。子供たちやけに静かだね。見てくるわ」

恭平は軽く謝り、そそくさとリビングへと消えた。

智子はムッとしたままメイクを続けた。

アイシャドウを塗り、ビューラーでまつ毛をカールしたあとマスカラを手に取ったが、蓋が開かない。

ひねってねじってやっとこじ開けたものの、マスカラはカサカサに乾燥していて使えた物じゃなかった。

「3ヶ月使っていなかっただけでこんなことになるの?安物だね。」

ため息混じりに言いながらリビングへ向かった。
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