うぶ婚~一途な副社長からの溺愛がとまりません~
「井上くん……ケチだね」

「ケッ……!?」

ふて腐れて言う社長に大きな声を出してしまうも、すぐに我に返り大きく咳払いをした。

「ケチと言われましても、困ります。とにかく私の口からお話することはできませんので、気になるようでしたら副社長からお聞きください」

一方的に言い、最後に「失礼します」と一礼して踵を返す。

すぐに「教えてくれてもいいだろう」なんて社長の嘆く声が聞こえてきたけれど、答えることなく社長室を後にした。

けれど誰もいない廊下に出たところで、壁に寄りかかった。

「……言えるわけないじゃない」

そしてポツリと漏れた本音。

副社長に『料理や掃除、洗濯を教えてくれないか?』と言われてから、週に何度か彼のマンションを訪れていた。

平日は一緒にキッチンに立って夕食を作り、休日は家の掃除共にしながら教え。以前にも増してふたりで過ごす時間が増えて、ますます私は副社長に惹かれている気がしてならなかった。
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