うぶ婚~一途な副社長からの溺愛がとまりません~
なにこれ、どうして名前を呼ばれただけで胸が痛いほど苦しくなるの?

両親や友達には昔から『日葵』って呼ばれてきたじゃない。

「そ、それはっ……ですね」

声を上擦らせながら答えようとしたものの、胸が苦しくて続かない。

なにか言わないと……頭ではそうわかっているのに、言葉が続かない。

こんなにも異性との距離が近く、迫られたことなんて一度もない。想像の世界でしかなかったことが現実に起きていて、頭の中はパニック状態。

こういう場合、どうやって回避すればいいの? どう言うのが恋愛上級者として正しいの?

必死に読んだ雑誌や漫画、小説を思い出していると突然副社長はハッとし、私の腕を離して元の位置に戻った。

「悪い、怖がらせてしまい。……本当に悪かった」

「い、いいえ」

答えながらも自然と掴まれていた手をギュッと握りしめてしまう。

彼が離れた今も、胸は高鳴ったまま。

「心配だから玄関先まで送らせてくれ」

「えっ?」

そう言うと副社長は車から降りた。
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