うぶ婚~一途な副社長からの溺愛がとまりません~
彼が言う通り、私は今、副社長に背を向けたまま。本当はこのまま家の中に飛び込みたいところだけれど……そうはいかないよね。

覚悟を決めて渋々振り返ると、副社長は探るような目を向けてきた。

「キミは……いや、キミも俺と同じなのか?」

副社長の言いたいことを瞬時に理解でき、気まずくて目が泳ぐ。

あぁ、やっぱり気づかれてしまったんだ。私が副社長と同じ、恋愛初心者だって。

けれど目を泳がせ、反論しないでいたら『そうです、私も恋愛初心者です。誰かを好きになる気持ちなんてわかりません』と認めているようなもの。

それに気づき、私は彼に向かって大きく頭を下げた。

「すみませんでした。私、副社長に嘘をついていました。……私も副社長と同じです。誰かを好きになるとどういう気持ちになるのか、この歳になってもわかっていません」

ゆっくりと顔を上げると、副社長は私のカミングアウトに目を丸くさせ驚いていた。けれどすぐに表情を引きしめ、真剣な面持ちを見せる。
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