God bless you!~第9話「その付属と、なんちゃって」・・・合同スポーツ大会

バレー。
バスケ。
サッカー。
野球(ソフトボールでも可)。
10㎞マラソン。(自由参加)
※雨天決行。

大会運営は、全て生徒の自主性に任される。
生徒会と有志が協力して、進行にあたる。
それぞれの種目に於いて、優勝メンバーに限らず、参加者にも賞品の用意があると、その一覧を見せられた。
「これは去年の賞品なんだけど、今年も似たような感じでいくので」
パソコン関連。ゲームソフト。キャラクター商品。スタバのカードから多種多様・商品券まで。バラエティ豊かなラインナップが続く。
かなりの豪華賞品である。
家電系ヘッドフォンはバリエーションが豊富でかなり個数があった。
「うわぁ!ビーツだぁ!今どこでも売り切れですよ。これ欲しいですぅ」
浅枝が1番に声を上げた。「色は絶対レッドで」とか言ってる。
その隣……ソニーの高性能ヘッドフォン。
ワイヤレスで、音質もハンパなく良い。そいつに関しては、俺だって喉から手が出るほど欲しい。これは、ガチで取りに行くしかない。
賞品に掛る費用は、全て付属側が用意するらしく、学校側とそんな約束になっていると言う。それを聞くと、経費として双浜の負担は殆ど無いと言えるかもしれない。あくまでも場所の提供のみだ。美味しいと言えば美味しい。
「あと、この10キロマラソンなんだけど……これは、できれば生徒会有志は、全員参加でお願いしたいなと」
「あーはいはい。あたしはやりませんけど」
右川は、頬杖をついた。
その姿勢で、お菓子をポリポリと、まだやっている。
「え?会長さんは走らないって事?それは、もう決まり……なの?」
打越会長の目が泳いだ。
「いえ、検討します」と、俺は前のめりで答える。
これが答えとしてふさわしいかどうかは、分からない。
「あーはいはい。決まりでぇーっす。あたしは、やりませーん」
ポリポリと続いた。そのお菓子はオマエじゃなくて、付属用だ!
だが取りあえず今は、それには目をつぶってやる。
「会長は双浜の代表として、理由もなくそういう訳にいかないって事で。走ります。いいよな?」
「あー、病気がちで……おえっ」
「そうは見えないって事で!」
お客の手前、穏やかに、穏やかに……だが目は血走る。
「みなさん♪偉そうにしてますけど、こいつはただの議長です。決め事に何の権限もありません。会長はやらないと言ったら、やらないんでーす」
阿木と桂木は、頭を抱えた。
浅枝と真木は、それぞれの顔色を窺って怯え始める。
「おまえさ。体力無いんだから、こういうチャンスに鍛えろよ」
「中途半端なバレー部員♪あんたに比べたら、あたしは毎日走ってるよ」
「それは凄い」と打越会長は感心して、「だったら是非一緒にやろうよ」
そんな打越会長の穏やかな笑顔に癒されて……いや、こっちは、それどころじゃなかった。
「走ってる?毎日遅刻スレスレの、あれか」
「朝からダッシュ♪瞬発力はあるって事で」
「とかいって、授業中に寝てんじゃねーか。持久力つけろよ」
気が付けば、付属側は唖然と、そして口を半開きでこちらを見ている。
「そんなケンカになっちゃうと思わなくて……困ったな」
打越会長が苦笑い。
阿木たちの「恥ずかしいわね」という顔が一斉に、俺だけに向いた。
てゆうか、俺?おかしいだろ、それ。
「勝ち負けとか、あんまり関係なくて。あくまでも交流が目的なので。と言う事で、右川会長、楽しくやりましょう!」
打越会長から握手を求められても、「えー」と右川が中々手を出さない。
俺は、お菓子をツマむ右川の手を強引に捻じり上げると、そのまま打越会長の手に重ねた。
段取りや予定など、詳しいことは付属側から改めて連絡するという事で、この日はお開きになる。
打越会長は出されたジュースを飲むだけに留め、帰り際、丁寧にそのお礼を伝えた。副会長2名、そして会計の赤野は、最後まで、飲み物も食べ物も、一切口を付けなかった。打越会長に続くお礼も、無かった。
「じゃ、帰るね♪」と出て行く右川の背中に溜め息を1つ。
後片付けを済ませ、阿木と桂木、3人で資料を眺めて、途方に暮れる。
浅枝は賞品に夢中。真木は……。
「な、な、なんか怖くなかったですか。あの人達の目つき」
いつものビビりだと思って、特に気にも留めなかった。
……が、真木はこの時、もう色々と感じていたらしい。

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