【医、命、遺、維、居】場所
「もぉ~。いい加減にしないと、温厚なこのあたしでも怒っちゃうよ~!」







ナースステーションの光景は、病院としてだけではなく産婦人科としても相応しくないんだけど、ね。





「そんな大きな声でどうしました?駒枝(コマエ)さん。」






腰に両手をあて、呆れたような諦めているような。


《困った時のコマエさん》なんて自ら言ってしまうような世話好きのベテラン助産師、駒枝さん。





いたずらっ子を叱っているようなニュアンスに、思わず声をかける。


苦笑いのおまけ付きで。





「あ、傅雖先生!またこの子が」




「傅雖先生!聞いてくださいよ!今朝、珍しく早起きできて、今日は良い日だ~なんてルンルン気分でモーニングして出ようとしたらドアが開かなくて!必死に、そりゃもう必死に押してたんですね!そしたら、なんと!!引き戸だったんです!」





店員さんに開けてもらって助かったんですよ!なんて、



入った時はどうだったんだろう、という疑問を問いかけることが出来ないぐらいの勢いで喋る、駒枝さんがこの子と呼んだ麦傍(ムギハタ)先生。



研修医を卒業しこの春から正式に産婦人科医として加わってやる気満々なのは素晴らしいことなんだけど、なんせ遅刻が絶えない・・・。





女医が少ない上に、オンコールじゃない日も所属上、兼任の私より先に呼び出しされてしまうから、勤務時間が長くなってしまって仕方ないと言えば仕方ないんだけど。
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