【医、命、遺、維、居】場所
「けど、思い通りにというか、みんなの気持ちにまで踏み込む訳にはいかないし・・・」





心配をかけないようにするのは難しい・・・・





「傅雖先生?どーしたんですか?そんな難しい顔して。」





声のした方向には、不思議そうにする麦傍先生がいた。





「え?そんな顔してました?」





とぼけてみたけど、顔に出てたのなら気を付けないと。






「何か難しい手術とかですか?」


「いまのところはありませんよ。・・昼ごはん、何にしようかと思ってて。」




麦傍先生には悪いけど、昼ごはんを食べようと食堂へ向かっていたのは事実だから矛盾はないはず。






「ああ~!悩みますよね!今の季節、ガッツリ系かサッパリ系か、悩みどこですもんね~。私はガッツリ系のカツ丼大盛を食べました!」








美味しかったですよ!なんて、オススメされていると麦傍先生のピッチが鳴る。







「はい、麦傍・・・っはい!分かりました、すぐ戻ります!」



「急変ですか?」



「あ、いえ・・・樫岡先生のお父さん、倒れたって連絡があったらしく早退するそうです。引き継ぎあるみたいなんで、わたし戻ります!」








パタ・・・バタバタと足音を立てながら、産婦人科に戻っていった。



天ぷら蕎麦も捨てがたいですよ!と、なんとも麦傍先生らしい捨て台詞を残して。










「倒れた・・・・」









けれど、麦傍先生の元気な声は、私には水中で聞いているかのように、遠くに聞こえた。
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