虫~殺人犯の告白~
取調室
「なぜ?」という言葉にカッとなったんです。

私がそう答えると、予想通りの答えが返って来なかったからか刑事はイライラした様子で書類を机に叩きつけた。

「そんな理由で殺されたんじゃ彼氏さんだって浮かばれないだろうさ」

「いえ、彼とは恋人同士ではありません」

「でも関係はあったんだろ!」

「彼には彼女がいましたし、お互い割り切った関係でした。愛情は…ありませんでした」

「世の中にはさ、彼女が沢山いる男なんて掃いて捨てる程いる訳よ。その事でのトラブルなんでしょ?」

この刑事はとにかく嫉妬や別れ話のもつれなどの結論にしたいとばかりに私を誘導していく。
この人は真実が知りたい訳じゃない。

私は…真実が知りたい。自分の中の真実が。
関係…と呼べる様な事はいつからだったろうか。

刑事は呆れた様に、侮蔑的な表情で溜め息をついてから私を見下ろし、首を傾けて言った。

「札幌には良く来てたの?」

「2ヶ月に一度位です」

「彼に会う為にか」

「そういう事になりますね」

「あんたの事でしょうが!あんたが殺したんでしょうが!なに他人事みたいに言ってんだ?」

私のうわの空の対応にとうとう我慢しきれず刑事は声を荒げた。

私は会話を諦め、今までの真実を心の中で辿り始めていた。


< 1 / 6 >

この作品をシェア

pagetop