君のいた時を愛して~ I Love You ~
帰宅すると、珍しく先に帰宅していた航が不機嫌そうに薫子のことを見つめた。
「どこに行っていた」
先日の、コータの訪問以来、虫の居所の悪い航は、薫を詰問した。
「私が、出かけるのがそれほどお気に召しませんでしたか?」
薫子は言うと、既に飲み始めている航のことを見つめた。
「お前が、しばらくぶりに実家に顔を出したと思えば、金の無心をしたと連絡があったが、まさか、あのろくでなしのために金を集めているのではないだろうな?」
さすがに、鋭い航の観察力に薫子はため息をついた。
「違います。懇意にしている大学時代の友人の息子が、また不始末をしでかしたとかで、もう私以外に頼る当てがないとかで、あなたにお願いするのも筋違いでしたから、実家に頼むしかなかったのです。お願いしたとしても、あなたはお耳を貸してはくださらないでしょう」
薫子の言葉に、航は『あたりまえだ』と答えた。
「そうはいっても、私にも友達付き合いというものがございます。皆が順番に都合してくれたのにと言われれば、私も知らぬふりはできないということです」
実際、大学時代の友人の一人息子は、以前から問題を起こしては友達仲間に支援を頼み、既に薫子もなにがしかの工面をして渡したこともあったので、まったくの嘘ではなかった。
「あの、成金のポルシェを乗り回している放蕩息子か。お前も、そんな友人などいい加減切り捨ててしまいなさい」
航らしい言葉に、薫子は返事をしなかった。
長い間、心の底は温い男なのだとずっと信じてきたが、コータとの一件を目にして以来、薫子は自分が最初から渡瀬航という男を見誤っていたのではないかと、思うようになっていた。
「あなたは、そんなだからお友達が少なくていらっしゃるのですよ」
薫子は皮肉で言ったつもりだったが、航は当然だというような顔をして見せた。
「友達付き合いなど、所詮は損得関係の延長のようなものだ。損にしかならない関係など、続ける意味もない」
航の言葉に薫子はため息をつくと、小さく頭を横に振った。
航の頭の中は、どこまで行っても損得勘定で成り立っているのだと思うと、薫子は跡取りも産めない自分を何の得もないのに屋敷に置いている航の気持ちがわからず、『部屋に戻ります』とだけ言い残して航の元を去った。
「どこに行っていた」
先日の、コータの訪問以来、虫の居所の悪い航は、薫を詰問した。
「私が、出かけるのがそれほどお気に召しませんでしたか?」
薫子は言うと、既に飲み始めている航のことを見つめた。
「お前が、しばらくぶりに実家に顔を出したと思えば、金の無心をしたと連絡があったが、まさか、あのろくでなしのために金を集めているのではないだろうな?」
さすがに、鋭い航の観察力に薫子はため息をついた。
「違います。懇意にしている大学時代の友人の息子が、また不始末をしでかしたとかで、もう私以外に頼る当てがないとかで、あなたにお願いするのも筋違いでしたから、実家に頼むしかなかったのです。お願いしたとしても、あなたはお耳を貸してはくださらないでしょう」
薫子の言葉に、航は『あたりまえだ』と答えた。
「そうはいっても、私にも友達付き合いというものがございます。皆が順番に都合してくれたのにと言われれば、私も知らぬふりはできないということです」
実際、大学時代の友人の一人息子は、以前から問題を起こしては友達仲間に支援を頼み、既に薫子もなにがしかの工面をして渡したこともあったので、まったくの嘘ではなかった。
「あの、成金のポルシェを乗り回している放蕩息子か。お前も、そんな友人などいい加減切り捨ててしまいなさい」
航らしい言葉に、薫子は返事をしなかった。
長い間、心の底は温い男なのだとずっと信じてきたが、コータとの一件を目にして以来、薫子は自分が最初から渡瀬航という男を見誤っていたのではないかと、思うようになっていた。
「あなたは、そんなだからお友達が少なくていらっしゃるのですよ」
薫子は皮肉で言ったつもりだったが、航は当然だというような顔をして見せた。
「友達付き合いなど、所詮は損得関係の延長のようなものだ。損にしかならない関係など、続ける意味もない」
航の言葉に薫子はため息をつくと、小さく頭を横に振った。
航の頭の中は、どこまで行っても損得勘定で成り立っているのだと思うと、薫子は跡取りも産めない自分を何の得もないのに屋敷に置いている航の気持ちがわからず、『部屋に戻ります』とだけ言い残して航の元を去った。