お嬢様、今夜も溺愛いたします。
「それにしても、大きくなられましたね」
「え……?」
目を細めてどこか懐かしい目をして微笑みかけてきた一色さん。
途端に、スっと私の前に影ができた。
「あんま見んなよ。
彼女のすべてを独占していいのは俺だけ」
そう言うと、私を後ろからぎゅっと抱きしめた。
「おーおーお熱いようで。
つーか、十夜。一人称、俺になってるって」
「別にいいだろ、お前の前では」
ムスッとした声が耳元で響く中、茶化すように笑う一色さん。
この間の怖い顔が嘘みたいに、穏やかで優しい雰囲気。
親しみやすそうな人だなぁ……
「お嬢様も。
あまり一色を見ないで下さい。
私よりもこの男の方がかっこいいですか?」
「えっ!?」
不機嫌な顔をして後ろから顔を覗き込まれる。
「そっ、そんなこと……」
「う〜っわ!
ほんっと美都のことしか頭にないのな、黒木って」
いつの間に傍にいたのか、ヤレヤレとため息をつく紗姫。
「八神様の言う通りですね」
一色さんや他の部下の人もみんな、苦笑いで十夜さんを見ている。
「当たり前。
他の男の視界にも入れたくないくらいだし。つーか、さっさと仕事に戻れ」
「はいはい、分かりましたよーだ!
お嬢様、その飢えた獣に食われないよう、十分お気をつけて」
「えっ!?」
目を見張る私に、一色さんたちは一礼して去っていく。
「俺も同感」
そう言うと、近くにいたもう1人の従業員さんに話しかける紗姫。
なっ、なんてことを言うの一色さんは!
それに紗姫も!!