お嬢様、今夜も溺愛いたします。
「と、十夜さん?」
見ればいつの間にかベッドに腰かける私の目の前にいて、なにやら箱のような物を持っている。
「失礼致します、お嬢様」
するりと持っていたティーカップを手から抜き取られ、サイドテーブルに置かれる。
「どうしました?」
なんだか私を見る目が甘いような……
心の奥底を見透かすような、引き込まれるかのような視線から逃れたくて俯こうとしたけれど。
「これは、なんです?」
差し出された箱に目を落として首をかしげる。
「なにって……紗姫と界さんからもらったリップグロスが入っていた箱ですけど」
「それは分かりますが、その裏側を見ていただけますか」
「裏側?」
質問の意図が分からずその箱をひっくり返した途端、目に飛び込んできたそのワードにピシッと固まる。
「お、男なら誰もがキスしたくなるリップグロス……?」
なっ、なんだこれーーーーっ!?
うっふんと色気が漂いまくりの綺麗なお姉さんが、人差し指を唇に置いて私を見ている。
「まっ、まさか界さんが言ってたのって……」
「界が、なんです?」
みるみるうちに不機嫌になっていく十夜さんに慌てて弁解する。
「しっ、知らなかったんです!
もらったものがこっ、こんなものだなんて!
それに界さんが、つけるなら十夜さんとふたりのときにって……」
「………」
はぁぁぁっと深くため息をついた十夜さん。
反対に私の顔はみるみるうちに真っ赤になる。
そういや紗姫、このリップグロスを界さんがめちゃくちゃ推してたって言ってたよね?
それを知らず、普通につけてた私。
こんなの、男の人なら誰彼構わずキスしたいみたいになってない!?
十夜さんの顔が見れない。
ど、どうしよう……
ただただ視線をさ迷わせてると、鼻がぶつかりそうなくらいの距離に十夜さんの最上級の微笑みがあった。