お嬢様、今夜も溺愛いたします。
──────────


それから無事お屋敷に着き、部屋へと入れば、

すぐにひんやりとした風が頬をすり抜けていった。


「す、涼しい……」


「良かったです。暑がりなお嬢様のために、前もってつけておいた甲斐がありました」


「あ、ありがとうございます」


「いえいえ」


胸に手を当て、恭しく礼をする。

どこまで完璧なの、この人………


お屋敷の中自体はそこまで涼しいってわけじゃないけど、この部屋……私の部屋だけはより涼しい。


「ではお嬢様。一度私は退出致しますので、何かありましたら、お声がけ下さい」


「分かりました」


そんな会話をしてる中でも、外はむんむんとした暑さ。

いくらお金持ちの通う学校とはいえ、中は涼しいけど、外はサウナ並み。


ちょっと歩いただけでも、汗ばんだ背中に制服がくっついて気持ち悪い……

早く、脱いでしまいたい。


「っ……お嬢、様」


「はい?」


ブラウスの前についているボタンを外す途中、黒木さんがゆっくり歩み寄ってきた。


「あの……なに、か?」


なんか、昨日と同じく、怖いんですけど…


何も言わず、ただ私を見下ろすだけの黒木さん。

眉間がグッとなって、どこか不機嫌なオーラを放っている。


「お嬢様」


「はい?」


「お嬢様は、昨日私がお教えしたこと、もうお忘れでございますか」


昨日?


「昨日、教えていただいたこと……はい、もちろん覚えていますよ?私は無防備で、隙が多いって話ですよね?」


それが今、どうしたってんだろう?


首をかしげる私に、黒木さんははぁ……と、顔を片手で覆うだけ。


「あのですね、お嬢様。確かに私は昨日、お嬢様に不埒な輩が……というお話は致しましたが、それは必ずしも他人だけとは、限らないのですよ?」


「他人、だけじゃない?」


うん?どういうこと?

目をパチクリさせて聞く私に、黒木さんはまたため息をつくだけ。


「本当に、お分かりにならないのですか」


「分かるもなにも、黒木さんの言っている意味が分かりませ………」


!!!??


「ちょっ、黒木さん!!!?」


なな、ななにやってるの!?


一瞬鋭い目で私を見たかと思うと、グイッと腰を引き寄せられる。


そして……


「ま、待って!!黒木さ………」


外れかけていたブラウスのボタンを、片手でゆっくり外していく。


片手で外せるとか、さすが……


じゃなくて!!


そこに見とれてる場合じゃない!!


こ、これじゃあ、キャミソールも、ブラも丸見えになっちゃう……!!

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